Note of Pediatric Surgery

腸内細菌、R、ときどき小児外科

肺分画症の血管走行

0. はじめに

肺分画症を手術する際に最も重要なことは、血管の走行を可能な限り把握し、予期せぬ血管損傷のリスクを最小限に留めておくことと考えられます。しかしその血管走行は単純ではありません。先日、肺葉内肺分画症の血管走行に関して議論があり、復習してみました。

1. 肺分画症の定義

肺葉内肺分画症と肺葉外肺分画症では血管の走行が異なりますが、まずはその定義を確認しておきます。肺分画症だけでなく肺嚢胞性疾患は定義について議論をするといろいろと複雑なのですが、取り敢えずPediatric Surgery 7th edition / Coranによると、

A BPS is a mass of nonfunctioning lung tissue that is supplied by an anomalous systemic artery and does not have a bronchial connection to the native tracheobronchial tree.

There are two forms of sequestration: extralobar and intralobar. Extralobar sequestrations are completely separate from the normal lung and are surrounded by a separate pleural covering, whereas intralobar sequestrations are incorporated into the normal surrounding lung.

とありますので、

肺分画症: 体循環からの異常動脈から血液が供給されており、本来の肺組織と気管支の交通が存在しない、肺組織の塊
肺葉外分画症: 正常肺組織から固有の臓側胸膜で完全に分かれているもの
肺葉内分画症: 周囲の正常肺組織と一緒に胸膜に包まれているもの

ということになります。肺分画症かどうかは動脈と気管支の異常が、外か内かは胸膜によって分類されているということですね。

2. 肺分画症の血管走行

一般的には下記の表の様に異常動脈は肺葉内・肺葉外ともに大動脈から、灌流静脈は肺葉内が正常と同じ肺静脈へ、肺葉外は奇静脈や半奇静脈へと走行する、形態を取ることが多いです。

f:id:Razumall:20171012133009p:plain

呼吸 30 (3): 257-261. から引用

しかし鎌田らは肺動脈から流入する肺葉外分画症の1例と文献レビューを報告していますが、それによると肺葉外分画症の異常動脈は6%が肺動脈から、灌流静脈は13%が肺静脈へと走行しています。改めて肺葉内・肺葉外の分類に血管の走行は関係ないということになりますし、そもそも肺葉内肺葉外という区分手術にはあまり意味をなさず、大事なのは流入・流出血管の走行をきちんと把握することになると思います。

f:id:Razumall:20171012133016p:plain 日本呼吸器外科学会雑誌 26 (4): 428-432.

また、異常動脈の本数は1本のみの場合が多いが、15%で複数の異常動脈を認めるということも手術の際に頭にとどめておくのが大事ですね。