小児水腎症の評価のための利尿レノグラム
1. 特徴
- 利尿負荷後のレノグラムのパターン ( washout curve ) によって閉塞の有無や程度を評価する
- 通常のレノグラフィでは軽度の水腎症でもレノグラムのカーブは閉塞パターンを示してしまうことが多いため利尿負荷をかける
- 分腎機能と尿路通過障害の評価を行うために重要な検査
- 再現性のある評価を行うためには適切なプロトコールが重要
2. プロトコール
2-1. Well tempered diuretic renogram protocol
2-2. 周産期、乳幼児期に発見される腎盂・腎盂尿管拡張の診断基準の利尿レノグラフィ実施のための標準プロトコール
2-3. 核種
99mTc-DTPA
- 糸球体で濾過さる ( GFR物質 )
- 分子量500の金属キレート剤
- 蛋白結合‘性が微量に ( 3 - 5% ) 認められる
- 血液中の細胞内へのわずかな移行を認めるため純粋なGFR物質ではない
- 扱いやすさと画像が描出できることから臨床的に用いられることがある
参考 : 理想的なGFR物質
- 蛋白結合性が低い
- 糸球体で穂過され尿細管での分泌再吸収を受けずに尿中に排池される
- イヌリンがその条件に最も合致している
- 日本国内では医薬品として認可されておらず原則的に使用はできない
99mTcMAG3
- 近位尿細管で分泌される
- 蛋白結合率が高く、赤血球接種率が低い
- GFRが低い
- MAG3によるERPFは大部分が近位尿細管での分泌機能を反映したものになる
- イメージングに優れ半減期が短く扱いやすい99mTcを標識物質にしている
- 良好な腎尿路画像が得られる
- 濃縮力の低い乳児にも適した物質
- 腎動態検査の主流となりつつある
- 通過障害の症例が多い新生児でも血中からのクリアランスが早く、レノグラムパターンの觀察が容易
2-4. 利尿薬
- Furosemide
- 1歳未満 : 1.0 mg/kg
- 1歳異常 : 0.5 mg/kg
- 投与のタイミング
- 使用核種をivする前
- 使用核種をivする時
- 使用核種が腎盂で充満する頃
3. 評価項目
3-1. 正常のレノグラムパターン
1. 血流相
- 腎血管に放射性物質が分布するタイミング
- 急激にcountが上昇する
- 10-20秒から30-60秒
2. 機能相 ( 分泌層 )
- 尿細管へと移行するタイミング
- 血管相に続く比較的緩やかな上昇部
- 尿細管細胞による摂取・集積と尿細管管腔への分泌による腎実質への分布
- 約3分間続く
- 尿量による影響はない
3. 排泄相
- 腎盂・尿管に排泄されるタイミング
- 尿量・尿の通過状態・体位が影響する
3-2. 異常のレノグラムパターン
- 通過障害の1つの指標であるT1/2 ( 半減期 ) を使用して評価する
- 尿路から使用核種が半減するまでの時間だが様々な方法がある
< 15分 : 拡張型 ( 腎盂腎杯の拡張はあるが閉塞なし ) 15 - 20分 : 境界型 ( 閉塞の有無は判定できない ) > 20分 : 閉塞型 ( 明らかな閉塞がある )
スロープ法
- 尿路に拡張を持つ小児の場合、放射能活性の絶対値をみると検査時間を60分間にしても半減しないことがある
- この場合、T1/2は無限大と判定され実状に合わない
- スロープ法のほうが絶対値によるT1/2よりも感受性が高く実状を反映するとされる
- 利尿剤投与後の最初の急峻な減衰曲線に接線を引き、Cmax からC1/2までの時間を求める
- 正常
- 閉塞型 ( 水腎症型 )
- 機能低下型
- 無機能型
3-3. 分腎機能
腎摂取率
* 静注後1-2分 ( = 分泌層 ) での積分値を求めて左右の比を求める
GFRとERPF
- GFRとERPFは相関する
3-4. 利尿薬に反応はあるが遷延する場合
- 腎盂が非常に大きい場合に起こりうる
- 腎実質から排泄され、腎盂内に貯留した放射性医薬品の一部は利尿薬に反応してwashoutされるが、残りが腎盂内にとどまるため
- 通過障害ではないため手術の適応とはならない
- 尿の停滞による尿路感染症や結石の原因となる
4. 問題点
- 患側腎の機能が著しく低下している症例では信頼度が低い
- 総腎機能の20%以下
- 偽陰性は稀
- DRが非閉塞性パターンであれば閉塞はないと言っていい
偽陽性が少なくない
参考
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- 小児先天性水腎症(腎盂尿管移行部通過障害)診療手引き2016
- 利尿レノグラフィ / 木全貴久 / 小児科診療
- 作者: 島田憲次,谷沢隆邦
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