腸内細菌叢の成長: 生後1000日の変遷
はじめに
次世代シーケンサーの普及により腸内細菌叢の解析が進み、新生児期から乳児期を経て成人型に腸内細菌叢がどの様に変化し、免疫システムの構築、アレルギー疾患をはじめとした免疫システムの異常に伴う疾患との関係性が少しずつ明らかになってきました。
やはり強調されているのは生後6ヶ月くらいまでの腸内細菌が重要ということで、この時期の栄養の問題や抗菌薬はインパクトが大きく、小児外科医として真剣に考えなければいけない問題だと思っています。
1. 新生児期
- 胎便は無菌だが、生後3-24時間で腸内細菌が定着してくる
- 様々な環境要因が関わるが母乳によるところは大きい
- 出生後の腸内細菌の変化は大きく2段階に分かれる
- 出生後から離乳まで
- 離乳から成人
- 新生児の初期は通性嫌気性菌が定着
- Staphylococcus
- Streptococcus
- Enterococcus
- Enterobacter
- 生後2週間で、通性嫌気性菌が嫌気環境を構成する
- Bifidobacterium
- Bacteroides
- Clostridium
- Eubacteriumが優勢となってくる
- 最近の研究では、在胎時から母体由来の微生物の影響を受けることが示唆されている
- 出生直後から、母体の膣、糞便、母乳、口腔、皮膚などの影響を受ける
- 母乳中には細菌が認められ、乳児の腸内細菌と同様の構成となっている
- こ母体の腸管から乳腺へとリンパ経路を介して細菌が移行
- 母体の皮膚もしくは乳児の口腔内細菌叢が移行
- 乳児の遺伝型、在胎週数、抗菌薬、出生経路、出生地、食文化などがその後の腸内細菌の発達に関与している
- 母乳で育てられた児はBifidobacteria優位の腸内細菌叢となる
- 人工乳で育てられた児はより多様性のある細菌叢となる
- 早産児や帝王切開で産まれた児
- 正期産や経膣分娩で産まれた児と比べて多様性が小さいて多様性が小さい
- bifidobacteriumの定着が遅くなる。
2. 離乳期
- Bifidobacteriaが依然優位であることには変わりない
- 少しずつ他の菌の割合も増え始める
- 成人型のBacteroidesやClostridium clustersIV and XIVが増えてくる
- Clostridium clustersIV and XIVは酪酸を産生する
3. 成人期
- 健康な成人は核となる細菌叢はほぼ他人と類似したものを持つ
- 一方、個人に特有の細菌叢保持している。
- 老年期には再び、bifidobacteriaが著明に減少し、菌叢自体も不安定になる
- 疾患への感受性が高くなることに貢献している可能性
- 正確ではないが、3歳にはほぼ成人型の腸内細菌叢が確立するという報告がある
- 年齢とともに腸内細菌叢が変化し、腸内細菌叢の発現する遺伝子も変遷する