J Microbiol Methods.: 細菌検体の急冷処理でマイクロアレイデータの信頼性は上昇する
Nature: 人工甘味料は腸内細菌叢を変化させることで耐糖能異常を引き起こす
Artificial sweeteners induce glucose intolerance by altering the gut microbiota.
最近、ネガティブな報告ばかり続く人工甘味料。腸内細菌に絡めた論文です。簡単に言うと人工甘味料 ( 特に本文ではサッカリンがメインに扱われている ) を投与することで、腸内細菌叢が変化し、代謝物が変化し、耐糖能異常が起こると。
ただしこの論文ではサッカリンの代わりに、同じ量のグルコースをコントロールとして置いています。これを同じ甘味を感じるのに必要なグルコースに変えたらどうなるか?腸内細菌叢は確かにサッカリンの方が悪くなりそうだけど、摂取カロリーは断然グルコース群の方が高くなります。個人的には普通のコーラをガバガバ飲んじゃう人が、ゼロコーラに変えること自体は健康に良さそうな気がしますけどね。
まぁネガティブなデータがたくさん出てるので、かく言う僕もゼロ系の飲料をやめて、すべて炭酸水にしました。完全に気分の問題ですけどね。
続きを読む抗原摂取に伴うIgEシグナルの阻害は成立した食物アレルギーを脱感作し、Treg細胞を誘導する Immunity
Immunoglobulin E signal inhibition during allergen ingestion leads to reversal of established food allergy and induction of regulatory T cells.
Abstract
- IgEはアナフィラキシーの様な即時型のアレルギー反応のトリガーになることはよく知られている
- IgEが摂取した抗原タンパクに対する初期抗体やTh2を介した免疫反応を増強するかどうか?
- IgEを阻害することで、抗原に対する感作を修正できるかどうか?を示した
- 脱抑制した形態のIL4レセプターを内部に有するマウスを使用し、アジュバントを用いずにピーナッツアレルギーを誘導するモデルを作成した
- 形質細胞とIgEは抗原タンパク抗体の誘導とTh2を介在する反応を誘導するのに必要であったが、Tregの誘導も抑制することがわかった
- FcεRIシグナリングキナーゼであるSykを欠失させた形質細胞では、もしくはSynを阻害すると、ピーナッツの感作が阻害された
- アレルギーが成立したマウスにおいて、Sykを阻害すると脱感作が促進され、Tregが誘導された
- 我々の研究によって食物アレルギーにおいてIgEがTh2への誘導だけでなく、Tregの抑制にも関わっていることが示唆された
Nature: 肝硬変の患者におけるヒトの腸内細菌叢の変化
Alterations of the human gut microbiome in liver cirrhosis.
Introduction
肝硬変は重篤な肝疾患で、急性肝障害もしくは慢性肝障害の結果起こり、原因はアルコールや肥満、肝炎ウイルスなど様々である。非代償性の肝硬変へと進行した患者の予後は不良であり、肝移植の適応となることも多い。肝臓は腸管と胆汁酸や門脈を介して密接に関係しており、過去の報告で腸管内の細菌やその代謝物が腸管粘膜のバリアを超えて肝臓へtranslocationすることが、肝硬変の進行に重要であることが判明している。
腸内細菌の組成が肝硬変の患者の腸内でどう変化するかはまだよく分かってはいない。ある報告では、腸内細菌叢の変化は肝性脳症や原発性腹膜炎といった肝硬変の終末期の合併症に関係しているとされており、またある報告では、アルコール性肝障害や非アルコール性肝障害といったearly stageの肝疾患において、その後、肝硬変にまで進行するかどうかに腸内細菌が関係しているとされている。しかし、ヒトにおける腸内細菌叢と肝組織の明確な関連性はまだ明らかにはなっていないため、123人の肝硬変群と114人の対照群の漢民族における腸内細菌の解析を行った。
続きを読む小児急性膵炎の死亡予測因子 PSI
Predictors for mortality following acute pancreatitis in children
Pediatric Surgery International
September 2014
Date: 13 Sep 2014
Guo, Mao Li, Yang Chen, Hankui Hu, Weiming Hu
Introduction
- 小児の急性膵炎の死亡リスクの報告は今まで為されていなかった
Patients and methods
- 対象年齢:0-18歳
- West China Hospitalに急性膵炎で入院した児
- 2002年-2012年
- 小児における死亡の独立因子を多変量ロジスティック回帰分析で解析
Results
- 小児急性膵炎の原因:胆道疾患23%、薬剤20%、特発性19%、外傷10%
- 死亡率5%
- 平均入院期間13日
- 入院中の臓器不全は371人中24人に起こり、24人中19人が入院3日で発症した
- 以下、死亡リスク
- 1週間以内のSIRSの発生:OR = 2.12, 95 % CI 1.14–6.32, P < 0.001
- 3日以内の臓器不全の発症:OR = 8.0, 95 % CI 2.2–12.3, P < 0.001
- 1週間以内の多臓器不全の発症:OR = 9.4, 95 % CI 2.3–14.6, P < 0.001
- 感染性壊死:OR = 1.28, 95 % CI 1.08–1.52, P = 0.02
- 特発性の発症:OR = 17.3, 95 % CI 2.0–60.5, P < 0.001
Conclusion
- 小児の致死率と合併症率は低い
- SIRS、早期臓器不全、MOF、感染性壊死、特発性は死亡リスクを上げる
Comment
当たり前と言えば当たり前ですが、特発性が予後悪いというのは勉強になりました。
Int J Surg.: 胆道閉鎖症・葛西術後のステロイド投与
Postoperative steroids after Kasai portoenterostomy for biliary atresia: A systematic review.
Aim
- このsystematic reviewとmeta-analysisの目的は、葛西術後のステロイド投与が減黄、胆管炎、生存率に寄与しているかどうかを明らかにすることである
Methods
- BA、Portenterostomy、ステロイド、グルココルチコイド、デキサメタゾン、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾンという語を使って論文を検索
- Primary outcome:減黄率
- Secondary outcome:胆管炎発症率、生存率
Results
- 10個のsystematic reviewと8個のmetaanalysisが該当
- ステロイド投与法はそれぞれのstudyで一貫性なし
- 減黄率:有意差なし(1.95; 95% confidence interval [CI]: 0.91-4.11; P = 0.087)
- 胆管炎発症率:有意差なし(0.75; 95% CI: 0.48-1.17; P = 0.202)
- 自己肝生存:ステロイド→30 ( 56% )、非ステロイド→ 31 ( 48% )
- 生存率はmetaanalysisのデータに適していなかった
Conclusion
- 葛西術後のステロイド投与は減黄率、胆管炎発症率を改善させないかもしれないが、利用可能なevidenceは限られており、確実ではない
- 今後の更なる検討を
Comment
Abstractではちょっと何とも言えない論文ですが、結果はステロイドの有効性を否定するものです。ステロイドの投与法のばらつきがどのくらいかが気になるところ。今までの報告もきちんと読んで解釈しなければいけませんな。