Note of Pediatric Surgery

腸内細菌、R、ときどき小児外科

PSI: 出生前後に診断された単純性肝嚢胞の診断と治療

Current diagnosis and management of simple hepatic cysts detected prenatally and postnatally

Pediatric Surgery International June 2014, Volume 30, Issue 6, pp 599-604

Purpose

  • simple hepatic cysts ( SHCs ) に対する治療方針は議論の余地がある
  • 自施設での後方視的検討により臨床像と手術適応、治療結果に関して報告する

Methods

  • 後方視的検討
  • 1993-2013にSHCsと診断された症例
  • 胎内診断、年齢、性別、臨床症状、診断に至った検査に関して検討
  • 手術症例と観察例の2群

Results

  • 男児25例、女児42例、全67例
  • 16例が胎内診断
  • 51例は出生後に診断、平均3.2年(10ヵ月-12年)経過観察されている
  • 平均年齢5.9歳(0-17歳)
  • 10例(男児4例/女児6例)に外科手術を施行

  • 57例の無症状の症例は経過観察

  • 経過観察例57例のうち、嚢胞の増大を9例(17%)に、臨床症状の出現を1例(2%)に認めた
  • 嚢胞が増大した期間(?)は36ヵ月(6-67ヵ月)であった
  • 右葉 47例、左葉 17例、両葉3例
  • 嚢胞径の中央値は無症状例で2.1cm(1.5-6cm)、手術例で13.7cm(8-25cm)
  • 統計学的に有意差があったのは腫瘍径(p<0.05)

  • 胎内診断のついた5例は平均1.5ヵ月(1週-6ヵ月)で手術を受けた

  • 胎内診断例の手術適応は、嚢胞による周囲組織の圧迫であった
  • 1例はpressure syndrome(? 肝静脈の圧迫?)により肝腫大をきたした
  • 2例は呼吸困難、1例は水腎症、1例は胆道系の圧排による閉塞性黄疸

  • 手術例の5例は出生後診断で腫瘍の増大と嚢胞による合併症が原因

  • 症状は5例全例に腹部違和感、腹痛あり
  • 1例は嚢胞内出血、1例は腹腔内への穿破をきたした
  • 1例は25cmの巨大嚢胞となり、二次性の感染をきたした
  • 2例は進行性に症状が増悪し、入院となっている

Conclusion

  • SHCsに対する保存的治療は実用的と考える
  • 外科切除は大きな嚢胞、pressure syndromeの発症、難治性の腹痛を伴う縮小しない嚢胞、経過観察が面倒になってきた症例に適応となる

Comment

昔、経験した胆道拡張症の戸谷Ⅴ型と診断された子を診たことがあって、治療法は肝移植としか書いてなく、これで移植するのか?などと思っていたのですが、実は肝嚢胞だったのかもしれません。胆管との連続性はありそうでしたが…なんてことを思い出しました。