鈍的肝腎脾損傷における早期離床の安全性
はじめに
October 20, 2008
Safety of Early Mobilization of Patients With Blunt Solid Organ Injuries
Jason A. London, MD, MPH; Lisa Parry, BS; Joseph Galante, MD; et al
Arch Surg. 2008;143(10):972-976. doi:10.1001/archsurg.143.10.972
だいぶ昔の抄読会で作った資料を読み返す機会があったので、せっかくなので記事を作ってみました。
前任地では、血行動態が安定した腹部鈍的外傷に関しては、bed rest protocolで加療していました。基本的には2週間の床上安静の後、腹部造影CTで評価してから離床を始めるというマネジメントだったのですが、3週間前後の入院期間となり、患児や家族にとって大きな負担となっており、入院期間をもう少し短くすることができないか、調べてみました。
割と興味があって昔いろいろとまとめたのも思い出しました。
Background
- Nonoperative Management (NOM) は血行動態が安定した患者に対する腹部鈍的外傷治療のスタンダードである
- 遅発性出血は稀だが重要な合併症
Material and methods
- 外傷レジストリから検索した後方視的検討
- the University of California, Davis Medical Center, Sacramento
- 16歳以上
- 2000-2004年
- 肝・腎・脾臓鈍的損傷
- EDで死亡、24時間以降経過からの受診、施設外開腹例は除外
- 脊椎損傷や気管内挿管など48時間以内に離床できない他の要因をもつものは除外
Results
患者背景
NOM失敗症例
腎損傷 (155例)
- 53例 (34.2%) 緊急開腹手術
- 102例 NOM
- 26例 (25.5%) 合併損傷あり
- 76例 NOM
- 3例でNOM失敗
- 全て他因子が要因で遅発性出血で失敗したものはなし
- その他の治療
- 2例 (G4) 尿管ステント
- 1例 動脈塞栓術
- 離床時期 (中央値 day2)
- 38% day1
- 72% day2
- 84% day3
肝損傷 (404例)
- 140例 (34.7%) 緊急開腹手術
- 264例 NOM
- 68例 (25.8%) 合併損傷あり48時間以内の離床が不可能
- 196例 NOM
- 2例でNOM失敗
- 全て他因子が要因で遅発性出血で失敗したものはなし
- 2例でNOM失敗
- その他の治療: 2例 動脈塞栓術
- 離床時期 (中央値 day2)
- 30% day1
- 66% day2
- 80% day3
脾損傷 (446例)
- 177例 (39.7%) 緊急開腹手術
- 269例 NOM
- 87例 (32.3%) 合併損傷あり48時間以内の離床が不可能
- 182例 NOM
- 13例 Failed NOM (7.1%)
- 2例 初期TAE後の膿瘍形成 -> Spelenectomy
- 10例 遅発性脾出血 -> Splenectomy
- 1例 膵損傷の合併疑い -> 経過観察
脾損傷の離床時期
- 遅れて離床させるほど、非成功率が高い (それほど重症なので当然か)
脾損傷のdelayed ruptureのリスク因子
Conclusion
- 固形臓器の鈍的外傷に対する離床のタイミングは開腹手術を要する遅発性出血には影響しない
- 厳格な床上安静のプロトコールは不要である
Limitation
- 後方視的研究であること
- いわゆる小児は含まれていない
- Delayed ruptureを起こした症例の平均bed rest期間が3日しかない
- そもそも米国全体が短い期間の管理になっている
長期間の臥床すると合併症率が下げられるかどうか?という問いには答えられないが、もう少し短い管理でもいいのではないか?と思いました。
- そもそも米国全体が短い期間の管理になっている