Note of Pediatric Surgery

腸内細菌、R、ときどき小児外科

脂肪酸と新生児の消化吸収

新生児における脂質の消化吸収

  • 糖質・たんぱく質より消化吸収能が未熟
  • 正期産時で10-15%、早産児 ( 32-34 ) で25-35% が吸収できず排泄される
  • 成人並になるのは生後数ヶ月経過してから
  • 原因は
    • 胆汁酸のプールが少ない = 胆汁酸そのものが少ない
    • 膵リパーゼ活性が少ない
      • 成人の1/10以下
      • 新生児では唾液リパーゼが主な役目を果たす
      • お乳中の母乳胆汁酸活性リパーゼも関与する
  • 新生児・特に未熟児ではMCTの方が消化吸収に有利

中鎖脂肪酸 ( MCT: C8-10 )

  • ミセル形成なしに直接小腸粘膜から吸収できる
  • 消化管上皮の粘膜リパーゼにより急速に加水分解され、遊離脂肪酸の形で門脈に入る

長鎖脂肪酸 ( LCT: C16-18 )

  • 胃内でエマルジョンを形成
  • リパーゼによって脂肪酸とモノグリセリドに分解される
  • 脂肪酸とモノグリセリドが胆汁酸とミセルを形成し、小腸粘膜から吸収
  • 再度、TGに合成され、カイロミクロンとなってリンパ管 -> 胸管 -> 静脈へ入る

必須脂肪酸

  • 母乳中総脂質の8%、牛乳中の4%に含まれる
  • 中鎖脂肪には必須脂肪酸は含まれない
    • 中鎖脂肪のみの投与では必ず必須脂肪酸欠乏が生じる

ω-6脂肪酸

ω-3脂肪酸

リノール酸 ( C18 )

  • 食物油に多く含まれる
    • 大豆に含まれるのでイントラリポスなどにも多く含まれる
  • 必須脂肪酸の1つ ( n-6系 )
  • 脂質内に含まれていると脂質全体の吸収がよくなる
  • 欠乏すると、発育遅延・皮膚炎・筋緊張低下を呈する

母乳栄養の特徴

脂肪乳剤

種類

  • イントラリポスとイントラリピッド
  • 脂肪の原料は大豆油で、大豆油トリグリセリド ( TG: 中性脂肪 ) が主成分となっている
  • 乳化剤として精製卵黄レシチンが加えられている
  • 等張化剤として静注用グリセリンが添加され、浸透圧比1となっている
  • 10%脂肪乳剤は1.1 kcal/ml
  • 20%脂肪乳剤は2.0 kcal/ml
  • 人工脂肪粒子の多くは200nm ( 0.2μm ) のフィルターを通過しない
  • フィルターを使用する場合は、脂肪乳剤用のフィルター ( 孔径1.2μm ) を用いる

大豆油脂肪製剤の特徴

  • 大豆油脂肪乳剤の脂肪酸は長鎖脂肪酸 ( LCT ) が大部分
  • ω-6系脂肪酸リノール酸脂肪酸の55%を占めている
  • ω-3系脂肪酸の含有量は少ない
    • ω-6系脂肪酸が過度にバランスのウェイトを占める
  • リノール酸
    • 体内でω-6系の脂肪酸として代謝される
    • 炎症性のロイコトルエンやプロスタグランティンを産生する
    • 免疫能の低下や全身の炎症反応の悪化を引き起こす
    • 理論的には大豆油由来の脂肪乳剤は長期投与や重症患者への投与には慎重を要する

投与法

  • 静脈投与された脂肪乳剤は、胸管から血中に入ったカイロミクロンと同様に代謝される
  • 脂肪乳剤が効率よくアポ蛋白を結合してリポ蛋白化され、順調に加水分解され代謝されるのには投与速度に限界がある
  • 日本人における脂肪乳剤TGの投与速度の上限は0.1g/kg/hr
  • HDLより人工脂肪粒子に転送されるアポ蛋白量には限度があるため
  • リポ蛋白化されない人工脂肪粒子はエネルギーとならずに、異物として網内系に認識され貪食される
    • 免疫能が低下する可能性

参考