新生児の消化管出血の初期対応
はじめに
新生児の消化管出血 ( 吐血・下血 ) は頻度はあまり高くないが、緊急性を要することが多いです。兎にも角にも中腸軸捻転を否定することが重要ですし、できない場合は小児外科にコンサルトが絶対に必要です。さらっと初期対応のポイントをまとめてみました。大事なことは
- バイタルサインを見て晶質液のボーラス投与を躊躇しない
- 問診をしっかりとって原因を絞る
- 腹部膨満・胆汁性嘔吐・全身状態不良が1つでもあれば中腸軸捻転を考慮して小児外科コンサルト
鑑別疾患
- この中で最も緊急性が高く、重要なのは腸回転異常症に伴う中腸軸捻転からの下血
- 腹部膨満がある、全身状態不良、胆汁性嘔吐など少しでも疑わしければ至急小児外科コンサルト
- 上部消化管造影で最終診断
処置
- 静脈ルート確保
- 頻脈を認めれば生食or細胞外液を20 ml/kg bolus iv
- Vit K:2mg iv ( < 1500 g,1mg iv)
- PPI:
- Sick kidsマニュアル: 1mg/kg iv q12h
- (Robert et al.)https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3616221/:0.7 mg/kg iv q24h
- Sick kidsは小児消化管出血の対応としての記載、Robert et al.は新生児に絞ったstudyだが逆流性食道炎の治療として
- 成人量20mg/dayとすると、0.4mg/kg/dayとしてRobert et al.の量が望ましいか
- 血液検査
- 血算
- 凝固系: PT, APTT, HPT, FIB, FDP, FDP D-D
- クロスマッチなど
- 胃管挿入 + 開放減圧
- 胃内容の確認
- ドレナージによる破裂の予防
- 誤嚥の防止
- 活動性出血の有無
- Apt試験: 血液が母体血由来 ( HbA ) かチェックする
問診
- 分娩経路:仮性メレナのスクリーニング
- 便の色:上部か下部、出血部位のの推定
- 上部消化管出血でも停滞時間が短ければ赤色になるので参考程度
- Vit K投与の有無:凝固異常のスクリーニング
- 人工乳開始の有無:消化管アレルギー
- 胆汁性嘔吐の有無:
- あれば腸回転異常症の可能性がかなり高まる
- なくても否定できないので注意
身体所見
- 腹部:膨満、圧痛の有無
- 頭部:大泉門の膨隆
- 体表:出血斑の有無
腹部US
- 腸管:
- 拡張腸管の有無 ( 閉塞起点に伴うSBO )
- 腸管壁の浮腫 ( アレルギー・細菌性を含む腸炎 )
- 血管
- SMA/SMVの位置関係
- 正常ならばSMAが患者左側・SMVが患者右側に存在する
- 捻転により位置が逆になる
- Whirl pool sign
- SMA/SMVの位置関係
画像診断まとめから引用
SMA/SMV位置異常
Whirl pool sign
- 肝臓:門脈閉塞のスクリーニング、門脈内ガスの有無
- 腹水の有無
参考
- The Hospital for Sick Children Handbook of Pediatrics
- 新生児・乳幼児の急性大漁消化管出血 / 漆原直人
- 新生児の吐血・嘔吐・排便異常 / 川瀬泰浩