Note of Pediatric Surgery

腸内細菌、R、ときどき小児外科

Nature: 肝硬変の患者におけるヒトの腸内細菌叢の変化

www.ncbi.nlm.nih.gov

Alterations of the human gut microbiome in liver cirrhosis.

Introduction

肝硬変は重篤な肝疾患で、急性肝障害もしくは慢性肝障害の結果起こり、原因はアルコールや肥満、肝炎ウイルスなど様々である。非代償性の肝硬変へと進行した患者の予後は不良であり、肝移植の適応となることも多い。肝臓は腸管と胆汁酸や門脈を介して密接に関係しており、過去の報告で腸管内の細菌やその代謝物が腸管粘膜のバリアを超えて肝臓へtranslocationすることが、肝硬変の進行に重要であることが判明している。

腸内細菌の組成が肝硬変の患者の腸内でどう変化するかはまだよく分かってはいない。ある報告では、腸内細菌叢の変化は肝性脳症や原発性腹膜炎といった肝硬変の終末期の合併症に関係しているとされており、またある報告では、アルコール性肝障害や非アルコール性肝障害といったearly stageの肝疾患において、その後、肝硬変にまで進行するかどうかに腸内細菌が関係しているとされている。しかし、ヒトにおける腸内細菌叢と肝組織の明確な関連性はまだ明らかにはなっていないため、123人の肝硬変群と114人の対照群の漢民族における腸内細菌の解析を行った。

Results

Fig.1

  • 腸内細菌叢の遺伝子量は肝硬変群 ( LC ) で健常コントロール群 ( HC ) に比べて優位に少なくなる
  • LCでは12種のBacteroidetetesと7種のFirmicutesが減少する
  • 逆に4種のstreptococcus、6種のveillonellaが増加しており、これらは口腔内常在菌である

Fig.2

  • LCとHCの腸内細菌の遺伝子を比較して、LC群に特有の遺伝子クラスターを28種、HCに特有の遺伝子クラスターを38種同定し、Metagenome species(MGS:メタゲノム種)として設定した
  • LCにおいてLC特有のメタゲノム種が多い群では少ない群に比べて、優位にMELD score、Child Pugh score、T.bil、PTの値が悪かった
  • LC群で減少している、Coprococcus comes、Ruminococcaceae、Lachnospiraceaeは酪酸産生を介して腸管免疫に寄与している
  • LC群で減少しているfaeclibacterium prausnitziiも抗炎症効果があるとされている
  • ( Extended data ) LCで減少している遺伝子の機能を調べると、膜トランスポーターや代謝経路にかかわる酵素などの機能が低下していることがわかった
  • ( Extended data ) このことがNH3やGABA、マンガン代謝と関連し、肝性脳症の原因になっている可能性がある

Fig.3

  • 網羅的に解析した腸内細菌の遺伝子から特徴選択のアルゴリズムを用いて15種の遺伝子を同定しバイオマーカーとして使用することを想定
  • これのありなしでROC曲線を書くと、AUCは83.6-91.8%と診断的価値高い
  • PDI ( 本文参照 ) というスコアを用いると、LCとHCで有意差が認められ、肝硬変の診断や病勢判定に用いることができる

Comment

今度は肝硬変のメタゲノム解析の結果が出ました。肝硬変では口腔内常在菌の割合が有意に増えることが示されています。原発性腹膜炎の起炎菌は口腔内常在菌で1st choiceはSBT/ABPCです。この理由がよくわかりました。また腸内細菌とNH3/GABAなどが関連しており、肝性脳症との関連も示唆されています。非常に面白い論文でした。