J Microbiol Methods.: 細菌検体の急冷処理でマイクロアレイデータの信頼性は上昇する
J Microbiol Methods. 2006 Feb;64(2):207-16. Epub 2005 Jun 27.
Quenching of microbial samples for increased reliability of microarray data.
Pieterse B1, Jellema RH, van der Werf MJ.
糞便中のRNAをなるべく安定して抽出することは、metatranscriptomeを行う時の最大の課題でもあります。そんなことでたどり着きました。
Abstract
- mRNAの量は分解と新たな転写によって瞬く間に変化する
- 転写内容が変化し、調べたいと思う状態をもはや表さなくなってしまうということは、サンプル採取や処理の間に容易に起こってしまうことである
- こういった望ましくない変化を避けるため、我々は-45度下でのメタノールを用いた急冷法を評価した
- Lactobacills plantarumの細胞を用いて、信頼でき、再現性のある”snapshot”のようなサンプルを作成することを目的とした
- 急冷法により採取された細胞における転写内容を、2種類の通常行われているプロトコールと比較した
- 定常状態での培養から異なる方法で採取された細胞の転写内容は有意差を持って異なっていることがわかった
- 細胞が急冷されていないときは、42の遺伝子もしくはオペロンの転写水準が変化していた
- 急冷された細胞から得られたデータ・セットにおける変化が、急冷していない細胞よりも小さく、転写内容の再現性が高いことが示された
Comment
便中のRNAを安定して抽出し、かつ代謝物も抽出できる方法は?と探して辿り着いた論文です。
- サンプルごとの転写内容は処理方法で変わってくる
- 3種類の処理方法によるPCAの第一成分はサンプル採取から細胞活動を停止させるまでの時間である
- 処理方法によって発現が増える遺伝子や減る遺伝子がある
つまりメタノール自体がRNAlatorの様な役割をするわけではなく、”極低温にできる溶媒”として使用するのがよいということでしょう。とにかく早く検体を冷やせと。とすると、自宅で採取した便をなるべくRNAを保存したまま輸送・保存する、という目的には使えなさそうですね。