Note of Pediatric Surgery

腸内細菌、R、ときどき小児外科

Bioanalyzer®に関するまとめ

Bioanalyzerに関する情報でまとまったものがなかったので、いろいろと調べたことをここに書いておきます。

1.Bioanalyzerとは?

Bioanalyzer®・バイオアナライザはAgligent Technology社から発売されている、マイクロチップ型の電気泳動 ( 細胞分析 ) 装置です。チップを使い分けることで、RNA、DNA、タンパク質、全細胞 ( フローサイトメトリー ) を測定することができます。

以前はRNAの品質を検定する際は、以前は電気泳動にかけて評価していましたが

1. 真核生物であれば18SリボソームRNAと28SリボソームRNAの濃度の比が1:2になっているか?
2. 18Sと28Sのバンドがシャープに出ているか?

という比較的アナログな方法で評価していたようです。

Bioanalyzer®は基本的には電気泳動であり、マイクロチップ内の非常に細い流路に充填されたゲルでサンプルRNAを分離しています。Bioanlyzer®は非常に少ない検体量で解析を行うことができ、12サンプル1チップで30分で測定することが特徴です。また後述の”RIN”により、total RNA分解度の数値化と客観化が行えるようになったことが、特にRNAの解析時には非常に有用です。

2. 18Sと28SリボソームRNA

以前からある方法のようですが、なぜ18Sと28SリボソームRNAの濃度比が重要なのでしょうか?そもそも18S/28SリボソームRNAってどんな意味があるのでしょうか?

リボソームは言わずと知れた”タンパク質の工場”ですが、リボソームRNAが60%を占めており、ほとんどがRNAでできた構造体です。

リボソームは大サブユニットと小サブユニットが結合してできています。これは生物の種類によって若干異なりますが、真核生物では大サブユニットが60Sで28S rRNAが主であり、小サブユニットが40Sで18S rRNAが主になっています。つまり18Sと28Sの濃度比というのは小サブユニットと大サブユニットの比を表していることになります。

ribosome02_23) より引用

ちなみに原核生物の場合は大サブユニットが50Sで23S rRNA ( と5S rRNA ) が主であり、小サブユニットが30Sで16S rRNAが主になっています。小サブユニットでmRNAが読み込まれ、大サブユニットでアミノ酸が連結されていきます。原核生物の場合は ( Bioanalyzer®では18Sと28Sと自動的にラベリングされてしまいますが ) 16Sと23Sの濃度比で、RNAの品質を検定することになります。

3. "S"とは?

Sは沈降係数を表し、遠心機にかけたときにどれだけ沈殿しやすいか?ということを表しています。Sが大きいほど沈殿しやすい。Sの値は重さだけでなく、形状によっても影響を受け、50Sと30Sを足しても80Sにはならず、70Sになるようです。

4. RIN

RNAはDNAに比べてかなり不安定な物質であり、RNAを抽出したとしてもその品質はまちまちになってしまうことが多いと思います。上述の様に以前は18Sと28Sの比なので、アナログに評価していたようですが、これを客観的で正確にしたものがRINです。

RINとはRNA Integrity Number、直訳すると”RNAの品質/完全性を表す数字”となります。10が最高点で0が最低点です。RIN4.6以下が1つの基準となるようですが、その減少程度は一律ではなく遺伝子によって異なるようです。

RINの算出方法は引用のリンク先を参照下さい。簡単には電気泳動像で、rRNAやrRNAの分解物が出現する領域を9つの領域に細分化し、そのピークの値を数値化し、それぞれの値に領域毎の重み付けをしてscoringしています。

f:id:Razumall:20171012132828j:plainf:id:Razumall:20171012132812j:plain Agilent社HPより引用

参考・引用

  1. Agilent バイオアナライザー2100 の紹介
  2. Agilent2100バイオアナライザ使用説明会のお知らせ

3. 生命の重要な機構である 『リボソーム』 4. RNA Integrity Number (RIN) - RNA の品質の客観的評価 5. RIN より客観的で確実なtotalRNAの品質指標